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ひっそり書店のブログです。 布乃伊の機嫌を損ねる場合があるので、誹謗中傷、小説等の紹介はなるべく避けてください。
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久々に掌編のアップ。
まぁ、ちょっとした描写の練習みたいなものです。
書いてみて思ったことは、「オチがないなぁ」といったことでしょうか。
それでも満足しています。書いているうちに、だんだん晴れやかな気分になってくるんですね。
もともとは「恵の大地」ってタイトルにしようとしたんですけど、全然「恵」って感じではないので。
では、読みたい方は続きからどうぞ。

「あ、いっけない! バスん中に帽子忘れてきた……」
 照りつける太陽に髪を焼かれる感覚は、私の間抜けな失敗を教えてくれた。都会と違って、ここは何だか日差しが強い……ような気がする。もうバスもいっちゃったし、しばらく我慢するしかないかぁ。
 私は今日から、この田舎――じゃなくて、この自然豊かな村で暮らすことになった。生まれてから一五年、ずっと都会で暮らしてたから不安も大きい。例えば、友人関係とか。ここの人とは育った環境がまるっきり違うから、もしかしたらいじめられるかも……自分で言うのも変だけど、私って結構軟弱だからなぁ。すぐ泣きそう。
 頭を振ってそんな不安を払い落とし、私はひび割れを起こした道路を歩き出す。空から降り注ぐ熱線を溜め込んだアスファルトは陽炎を生み、それはまるで、私の行方はこんなにも揺らめいているのだよと教えているかのようにも見えた。
 暑さってのは、とことん人を弱気にさせるなぁ。母さん身体弱いから、倒れたりしなければ良いけど。
 母さんと言えば、父さんも母さんも、ちょっとした後処理が残っているからここに到着するのは明日になるって言っていた。だから今夜だけは、新しい家に私一人だけで過ごすことになる。既に電気もガスも使えるようにはなっているから、不便はないだろう、と母さんも言っていたし、多分大丈夫……かな。
 道路の左手――多分北――には林が広がっている。風が吹くと木々がさわさわと音を立てて、とてもすがすがしい気持ちになれた。
 対する右手はまるで崖のようになっていて、その下を見下ろしたところに村がある。家が立ち並ぶ様子よりも、緑の美しい畑が印象に残る。都会では決して見れないような景色。この道をもう少し進めば、あの村へ降りることが出来る。そう思うと、さっきまでの不安が覆されて逆にうきうきしてくる。
 新しい生活が、私を待っている。バスに忘れた帽子のことなんて、本当にちっぽけなことに思えるようなこの光景に、これから飛び込んでいくんだ。
 そんな新鮮な期待を胸に抱き、私はスカートが翻るのも気にすることなく、道路を一気に駆け出すのだった。

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プロフィール
HN:
布乃伊奴
年齢:
35
HP:
性別:
男性
誕生日:
1990/05/14
職業:
生徒
趣味:
特になし
自己紹介:
三次元未確認人型無気力生命体。
他者の作品を嫌うことで、「自分オリジナル作品」を目指している……らしい。
小説等の作品を紹介されることを極端に嫌う。
それにより、時折機嫌を損ねて手近な紙を引き裂き続けることも。
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